横須賀市にゆかりのある文学者や歴史上の人物にスポットをあてて、時代背景とエピソードを交えながら彼らの文芸を紹介します。
〔咸臨丸の人々〕勝海舟(2)
勝海舟は折に触れ、漢詩を詠んでいます。そのなかの一篇が「南洲(西郷隆盛の号)を弔す」で十六句からなる長い詩です。西郷は征韓論政変の後、帰郷し、私学校の生徒らに推されて挙兵するも敗れ、西郷は自刃しました。この詩は「亡友 南洲氏」で始まり、「豈に意(おも)はんや 国紀を紊(みだ)すを 図らず 政変に遭ひ 甘んじて賊名の訾(そし)りを受く」(西郷は国家を騒がそうとは思ってはおらず、図らずも変乱に巻き込まれ、国賊の汚名を着ることになってしまった)とか、「毀誉 皆 皮相 誰か能く微旨を察せん」(世間の評価は表面的なものであり、西郷の奥深い心を理解する者はいない)など、西郷に対する親愛の情に満ちた作品です。
(洗足学園中学高校教諭 中島正二)