横須賀市にゆかりのある文学者や歴史上の人物にスポットをあてて、時代背景とエピソードを交えながら彼らの文芸を紹介します。
〔咸臨丸の人々〕勝海舟(4)
『勝海舟全集20』(講談社)収載の「海舟句集」を見る限り、海舟の詠んだ句は50句に満たず、漢詩や和歌に比べると多くありませんが、海舟の人柄が偲ばれる句などが散見され貴重ですので、少々紹介します。「欲張りて纏頭(はな)失ふな勝角力(かちずもう)」は、日清戦争後の三国干渉の頃の句で、悲憤慷慨する世の人々をたしなめるような句。「纏頭」とはご祝儀のこと。ちなみに、海舟は日清戦争反対論者でした。海舟自身が得意としていた句は「時鳥不如帰つひに蜀魂」。「蜀魂」というのは、古代中国の蜀の望帝の魂がこの鳥に化したという伝説による異称です。「ほととぎす」に異なる漢語を当てたのが妙味。
(洗足学園中学高校教諭 中島正二)