最近の大晦日は、生活習慣の変化に伴い過ごし方も多様化したことによって、かつてのように「紅白歌合戦」「行く年来る年」のテレビ依存型から変化が見られるようになりました。
そうした中、大晦日の午後11時を過ぎる頃からJR横須賀駅前のヴェルニー公園には、年越しのカウントダウンに参加するために多くの人が集まり始めます。ボードウォークに立って海を見渡すと、多くの艦艇が美しくイルミネーションに彩られ素晴らしい景観を形成しています。公園広場には仮設の舞台が設置され、広場内には「海軍カレー」のコーナーをはじめ多くの食べ物コーナーが軒を並べます。
このカウントダウンは、何時どのように始められたのでしょうか。1996年(平成8年)の秋が深まる頃、異業種交流グループの会合がありIT関連企業の経営者の方から「私達ヨット仲間で年越しのカウントダウンを実施していますが、参加してみませんか」との誘いがあり、午後11時過ぎに指定されたヴェルニー公園内の下水ポンプ場裏にシャンパンを手に赴きました。海面を見ると10隻あまりのヨットが小さな灯りをともして停泊していました。その中の一隻に案内されるとコーヒーショップのマスターや、市の職員の顔も見えます。缶ビールを片手に雑談をしているとカウントダウンの後に城ケ島沖に初日の出を見に行く話などが出てきました。ラジオが午前0時近くの時刻を告げるので、全員で甲板に登ると音を出せる用具が配られました。すると停泊中の海上自衛隊・アメリカ海軍の艦船のイルミネーションは全て消されて漆黒の闇となりました。ラジオはいよいよカウントダウンを始めます。そして午前0時の時報を合図に鳴り物を鳴らして新年を祝いました。一方艦船はイルミネーションが再点灯され、一斉に汽笛が鳴り響きます。まるで空から降り注ぐようです。何と言う感動でしょうか。ヴェルニー公園でも数十人の人もこの感動を味わったことでしょう。この海の景観、艦船の光と音の迎春は他では味わうことはできないもので、もっと市民にこの感動を味わってもらいたいものだと思いました。年が明け観光課と商工会議所に話してみると、たいへん乗り気になって両者で検討することになり、実現の運びになりました。
(元横須賀市助役 井上吉隆)