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よこすか文学館

十月の俳句

よこすか文学館<46>

横須賀に生まれ育ち、高浜虚子の俳句理念を継承し、長年にわたり活動を続けた俳人高田風人子の作品をご紹介します。

秋刀魚々々々 秋刀魚の歌の ありしかな   高田風人子

第4句集『四季の巡りに』(2016年)所収。「々」は躍り字(反復記号)で、読みとしては、「さんま さんま さんまのうたのありしかな」となります。「秋刀魚の歌」は佐藤春夫(1892ー1964)の著名な抒情詩、谷崎潤一郎との「細君譲渡事件」を背景に持つ詩としても知られています。「…さんま、さんま、さんま苦いか塩つぱいか。…」というフレーズが出てきます。食卓のサンマを見てこの名詩をふと想起した、といった句でしょうか。

(洗足学園中学高校教諭 中島正二)