難病による闘病生活の中、珠玉の作品を作り続けた横須賀出身の俳人折笠美秋(おりかさ・びしゅう1934-1990)の作品を紹介します。
うつむきて白き鶴折り「あなたよ」と 折笠美秋
折笠美秋の句集『君なら蝶に』には、妻智津子さんのことを詠んだ句が多数あります。掲句もその1つ。作者の視線で読めば、次のような情景が浮かびます。「妻がうつむいて何かをしている。何だろうと思っているとしばらくして妻は顔を上げて、折り上げた白い鶴を差し出した。「これ、あなたよ」と言いながら」。智津子さんが祈りを込めて折った鶴に、身体は動かなくとも精神を飛翔させ句作を続ける夫(作者)の姿が重なったのでしょう。
(洗足学園中学高等学校教諭 中島正二)