難病による闘病生活の中珠玉の作品を作り続けた横須賀出身の俳人折笠美秋(おりかさ・びしゅう1934-1990)の作品を紹介します。
抱き起こされて妻のぬくもり蘭の紅 折笠美秋
数多くある妻を詠んだ句の一つ。『角川俳句大歳時記』ではこの句が「蘭」の例句として掲出されています。句意は平明で、赤い蘭の飾られた病室で、妻の智津子さんに抱き起されてぬくもりを感じているというもの。「ぬくもり」は、妻と蘭の紅色の両方から感じているようです。ところで、「蘭」は通常の歳時記では秋の季語なのですが、『現代俳句歳時記』(学研)では「秋に開花期を迎えるランは少数派です」として春の季語になっています。
(洗足学園中学高等学校教諭 中島正二)