横須賀が登場する文芸作品(マンガも含む)や横須賀に縁のある文学者を紹介します。
『逸見小学校』庄野潤三(新潮社)
戦後文学の代表的な作家庄野潤三が1949年に脱稿した後、未発表のまま原稿が残され、没後の2011年に発表された小説。戦争末期、海軍が接収していた逸見(へみ)小学校(当時は国民学校)を舞台に、独立高角砲隊長千野少尉のそこでのひと月ほどの生活を描いた小説で、庄野自身の海軍体験がもとになっているようです。この生活は、出撃までの1ヶ月の間、兵隊をのんびりさせて、英気を養うことを目的としており、実にゆるい日常です。もちろん当時の戦局は厳しく、時折重苦しさも漂いますが、兵隊たちは1泊2日の帰省が許されたり、千野少尉も西那須野の恋人に会いに行ったりして、当時の前線とは全く異なる、のんびりとした生活が描かれています。
(洗足学園中学高等学校教諭 中島正二)