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よこすか文学館

西脇順三郎の詩碑

よこすか文学館<105>

三浦半島に点在する文学碑や史的記念碑を実見し、作者やその作品の成立事情、碑の現状などについてご紹介します。

<西脇順三郎詩碑(観音崎公園)>詩
燈台へ行く道
まだ夏が終らない
燈台へ行く道
岩の上に椎の木の黒ずんだ枝や
いろいろの人間や小鳥の国を考えたり
「海の老人」が人の肩車にのって
木の実の酒を飲んでいる話や
キリストの伝記を書いたルナンという学者が
少年の時みた「麻たたき」の話など
いろいろな人間がいったことを
考えながら歩いた

西脇順三郎(1894~1982)は昭和の詩人。新潟県小千谷市生まれ。1917年、慶應大学理財科(現・経済学部)を卒業。1922~25年、慶應義塾留学生としてイギリスで学びます。イギリス留学中、英語詩集『Spectrum』をロンドンで自費出版しました。帰国後、慶大教授に就任。詩壇の新しい芸術運動の中心的人物として活躍していきます。彼の名を歴史的なものにした『Ambarvalia』(1933年)の他、多数の詩集や詩論集があります。碑の詩は『近代の寓話』(1952年)収載の「燈台へ行く道」の前半部です。観音崎燈台への道を歩きながら、『千夜一夜物語』のシンドバッド航海譚に出て来る怪獣「海の老人」やフランスの宗教史学者エルネスト・ルナン(1823-1892)のエピソードを連想するといった、自由な発想による詩です。

(洗足学園中学高等学校教諭 中島正二)