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横須賀製鉄所物語

スチームハンマー

横須賀製鉄所物語<4>

JR横須賀駅を出て海に向かい左手に進むと、ヴェルニー記念館が迎えてくれる。この建物は、横須賀製鉄所(造船所)を建設し、日本近代化の基礎をつくりあげたフランス人フランソワ・レオン・ヴェルニーの功績と横須賀製鉄所の意義を永く後世に伝えるために、2002年(平成14)に完成したものです。

この施設の中には、国の重要文化財に指定された3トンスチームハンマーと0.5トンスチームハンマーが展示されています。展示されているスチームハンマーは、1853年(嘉永6)ペリー来航により幕府は大型船建造禁止を解除し、幕府も自ら大型船の建造に着手したが、大型船の建造技術も機材も日本には無く、形は大型船に見えても中身は今までの和船のままで、外海に航海できるようなものではなかった。そこで幕府は幕臣を1864年(元治元)オランダに派遣し、大型船建造技術の伝習と大型船建造に要する機材等の購入に当たらせた。

その後、幕府は時をおかずにフランスの技術援助を受け横須賀製鉄所の建設を決定し、フランスに機材の購入、技術者などの雇入れのため職員を派遣し、オランダで購入した機材を引き継ぎ日本に輸入したもので『横須賀造船史』によると、スチームハンマーは6基購入されておりそのうちの2基が展示されています。

特に3トンスチームハンマーは、1997年まで在日米海軍横須賀基地艦船修理廠(以下SRFと略す)で現役として使用されていたもので、老朽化しアメリカ本国の了解のもと廃棄する際に、保存を要請し残されたものです。

また0.5トンスチームハンマーは、土台にひびが入り使用不能となり1970年(昭和45)SRFから保存を求める声が大きく、アメリカ海軍、オランダ大使館、横須賀市長の協力により保存されることになり、1971年(昭和46)SRFの人々の手により博物館の前庭に設置されました。そして、ヴェルニー記念館の完成に伴い移設されることになりました。

(注)ヴェルニー記念館に展示されているスチームハンマーには、製造年である1865年の刻印が記されている。

(元横須賀市助役 井上吉隆)