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よこすか文学館

第九回(海軍兵学校詠歌2)

よこすか文学館<21>

敗将と呼ばるるひとりの訓示にて
校長なれば黙し聴きゐつ

島田修二

最後の歌集『行路』(2000年)所収。島田が海軍兵学校に入学した1945年当時の校長は、栗田健男中将でした。前年10月、レイテに侵攻した米軍の機動部隊をおとりの艦隊が北方に誘い、その隙に栗田中将の艦隊がレイテ湾に突入するという作戦が実施されましたが、栗田艦隊は突入前に突如「謎の反転」をして、作戦は失敗します。3隻の戦艦その他を失う大敗でした。その「敗将」の栗田中将も校長である以上、生徒たちは黙って訓示を聴いている、という、苦味のある歌。

(洗足学園中学高校教諭 中島正二)