YRPの建設について、計画段階から環境問題を重視しました。プランの作成以前には現地の踏査を実施しました。60ヘクタールの大きな丘陵地帯で、ほぼ中央部は谷を形成し湿地帯が東から西に向け形成されていました。その湿地帯は以前には田に給水のために利用されていましたが、減反政策で田は既に消滅してしまいました。そこで現況がどうなっているのか藪漕ぎをして湿地帯に降り立つと、驚いた光景が目に入りました。そこには多くのたばこの吸い殻が散乱していてよくぞ火災にならなかったものだと驚愕しました。そして、スナックの菓子の袋が所せましと捨てられていました。
土地の所有者も利用されなくなった土地なので、そのまま放置されていたので周辺に遊びに来た人により、こうした惨状になったものと思われました。そこで、開発後も湿地帯を再生しそこに生息する生物を保護できないかと考えました。
一方、開発に当たっては丘陵部分を切り取る土砂をどうするか、開発地から他の処分場に運搬するのであれば、沿道の住民に方々に迷惑をかけることになるので、開発地内で処理することにしました。そこで、湿地帯を埋め立てることになるので学識者により、埋め立てに伴う湿地の再生について検討していただき、その検討会の結果に従い先ず湿地帯の周辺を整備し、その地に湿地部分の土砂、植生を仮置きしておき、湿地を形成していた谷の部分を周辺の丘陵部分を切り土した土砂を30メートル埋め立てて、その上に仮置きした湿地の土砂、植生を埋戻し湿地として再生しました。そして、上流の水を以前のように湿地部分に取り込むことが出来て、完全に復活できました。現在この湿地帯には野鳥が飛来し、撮影に来る人も増加しています。
YRPが完成した後に、当時の環境庁長官が現地視察に見えられ、湿地帯を30メートル嵩上げして残したこと、隣接して水辺公園を新設したことによりカワセミをはじめ多くの野鳥が訪れ、市民の目を楽しませていることについて、長官から「こうした開発手法は今後の開発にあたってのモデルになるのではないか」との評価を頂いたのが印象的でした。
この環境に配慮したYRPも学識者、行政、開発事業者の一体となった取り組みにより実現いたしました。
(元横須賀市助役 井上吉隆)