横須賀が登場する文芸や横須賀にゆかりのある文学者を紹介します。
山田深夜
『電車屋赤城』(角川文庫)
三浦半島を走る私鉄「神奈川電鉄」(京浜急行がモデル)の、職人気質、無愛想、ポーカーフェイスかつブルース愛好家でもある整備員赤城を中心とする長編小説です。作者自身が京浜急行に約20年勤務した経歴の持ち主ですので、1000系と3000系の違いとか、ドアの開閉システムの仕組みとか、電車に関する実にトリヴィアな知識が満載です。電車の整備員が主人公というのも珍しいですが、周囲にも、4年間引きこもっていた少年とか、元三崎のマグロ漁師だった同僚とか、いろいろな人たちが登場し、彼らが主人公となっている章もあり、連作小説の趣もある作品です。電車愛に満ちた、鉄道マニアでなくとも感動する、京浜急行利用者必読の書。
(洗足学園中学高校教諭 中島正二)