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よこすか文学館

折笠美秋

よこすか文学館<61>

難病による闘病生活の中、珠玉の作品を作り続けた横須賀出身の俳人折笠美秋(おりかさ・びしゅう1934-1990)の作品を紹介します。

ひかり野へ君なら蝶に乗れるだろう 折笠美秋

美秋の句のなかで、最も人口(じんこう)に膾炙(かいしゃ)しているものです。「ひかり野」は、光あふれる野原、という意味で、さらに、現実を離れた、苦しみや悲しみのない天国のような世界のイメージもあります。そこへは「蝶」が運んでくれるのですから、花に満ち溢れた情景が浮かびます。「君」は妻の智津子さんのこと。自分のために尽くしてくれている「君なら」(誰でも乗れるわけではない)「蝶」に乗ってひかり野へ行けるよ、という妻への感謝と愛の句です。

(洗足学園中学高等学校教諭 中島正二)