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よこすか文学館

岩野泡鳴の詩碑

よこすか文学館<104>

三浦半島に点在する文学碑や史的記念碑を実見し、作者やその作品の成立事情、碑の現状などについてご紹介します。

<岩野泡鳴詩碑(平和中央公園)詩

田戸の海ぬし
田戸に山崎、また堀の内、
走り水にも、また大津にも、
春のうしほは朝ゆふ寄せて、
けむる霞の奥より見ゆる、
淡き猿島、島とは云へど、
田戸のおやぢが巣にこそ似たれ。

岩野泡鳴(1873-1920)は兵庫県淡路島生まれ。明治、大正期の文学者で、文学史的には自然主義の小説家として著名ですが、詩人、劇作家、評論家としても活躍しました。

筆名の泡鳴は生地の「阿波(泡)の鳴戸」のもじりです。

碑の詩「田戸の海ぬし」は、1905年刊行の第3詩集『悲恋悲歌』収載された、7聯からなる七七調の詩で、碑文はその第1聯。第2聯以降には、「田戸の海ぬし」とは、「浦の人々」から「うやまひ懼(おそ)れ」られていた老漁師「猪ノ助」のあだ名で、彼は時代遅れの「ちよん髷(まげ)」を結っており、妻は「龍宮のいたづら小僧」と笑っていたことなどが描かれています。

(洗足学園中学高等学校教諭 中島正二)