浦賀港の入口に、日本で最初の和式灯台・燈明堂があります。江戸時代に幕府によって築造され、明治の初期まで約220年にわたり、東京湾の夜間の航行の安全を守る役割を担ってきました。当時は、菜種油を原料としたわずかな灯火でありながら、漆黒の闇に包まれる東京湾では、かなり遠くの方からも確認できたようです。もしかすると、対岸の房総半島からも確認できたかもしれません。
東京湾に面した三浦半島で、昔からの自然や海岸線が残る数少ないロケーションです。ここではのんびりと時間が流れ、東京湾を行き交う船を眺めていると、それらの船が黒船に見えてきます。「日本の夜明けぞよ」という声までもが聞こえてきそうです。地元の人たちによって、再建された燈明堂を中心に、周辺の海岸清掃がボランティアで行われています。自然を残そうという地元の人たちの灯火は、次の世代へと受け継がれていくことでしょう。